沼袋にある焼肉屋平和苑飢える噛む

1990年の初め、沼袋に住んでいる友人に「いつも開店前から並んでいる焼肉屋が近所にあるんだけど行ってみない?」と誘われ夕暮れ前に行ってみたのです。

お世辞にもきれいと言えない外観で、黄色い店のテントには平和苑、飢える噛むと書いてました。

welcomeを飢える噛むという漢字で当て字するあたりにただならぬものを感じながら、七輪で火をたいている女性店員さんに人数を告げて入店することができました。

店内は昔ながらのテーブルとイスが、これぞ町の焼肉屋さんという感じでとても居心地の良いお店でした。

わさびカルビなるものを頼むとお店の店主であろう親父さん自らが網でお肉を焼いてくれました。

片側だけ焼いてわさびを巻くように食べる。

良い状態の肉だからこそできる食べ方に、すごい店があるのだと感動しました。

圧巻はレバーの焼き方です。

親父さんいわく、普通に一枚ずつ両面焼いてたんじゃ肉の美味いとこが全部下に落ちちゃうんだよ。

だからこうやって焼くんだと、盛られてきたレバーを全て網に流し込み、混ぜるように焼いてお皿にわけてくれるのです。

 

美味い。

ふっくらとした焼き加減はあの親父さんの焼き方でないと再現はできません。

そんなんで感動ばかりしていると親父さんは話好きのようで私たちのテーブルに居座って色々なこだわりの話をしてくれました。

「昔から日本酒が好きでね。お金が無いときは500円持って店に行き、一杯だけ美味い日本酒を飲ませてくれなんて言ったもんだ。」

と言いながら、ごちそうするから飲んでみと日本酒をふるまってくれる。

青森から美味しいリンゴジュースが届いたからとそれもまたサービスで出してくれる。

私多義が恐縮するぐらいのサービスをして頂きました。

「いつもあるわけじゃないけど、今度来たらセンボンという肉を頼んでみたらいい」と言われ、数週間後に再度来店し注文すると、親父さんは私たちを一瞥した後こう言いました。

 

「きみたちセンボンなんかよく知ってるね」

 

親父さん元気だったらうれしいな。相席居酒屋 東京